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不況時の不動産価格


草野 裕樹

 昨年9月に始まった世界同時不況も、始まって1年が経った。今までなかったような事象が発生し、販売動向の低下、生産調整の窮迫など多くのマイナス要因を生み、未だにその猛威をふるっている。この状況下において、不動産の取引動向はどのような動きを見せているのだろうか。

 不動産価格はその時の経済状態を大きく反映する指標にもなる。好景気であれば取引件数も販売価格自体も上昇傾向になるが、逆に景気が後退し始めるとそれに伴うように販売件数も、価格自体も減少傾向を示すようになる。実際、現在の取引動向を見てみると去年と同額・同質のものが販売できうるかというとそうは行かない。同質までは一緒でも、価格自体にもっと魅力を持たせないと他の物件と対抗することが出来ず、同額同等のもので「地下鉄駅から近い」「スーパー至近」「日当たり良好」「リフォーム済み」など多くのメリットをもったものに対して対抗することができない。そうなってくると自ずと価格は下落していき、売れ残りになるのを嫌うように下落傾向になっていく。

 また、不動産は元々価格が高額なので手を出しにくく、特殊な事情がない限りは買い控えなども発生することも懸念される。現状においてこの状況が構築されつつあり、売買価格で魅力あるもの以外は売れにくくなってきている。

 しかし、逆を言えば「価格的に安い」もしくは「物件的に割安感がある」などの事情があれば金額は安かったとしても取引は成立し、需要自体も伸びてくる。昨年との比較の話に例えると、「去年は●●円だったものが、○○円まで下がった。△割安くなった」という目に見える比較さえ出来れば需要を掘り起こし、成約に繋げることも可能なのである。これは売買に留まらず、賃貸の方にも言えることである。今までの家賃設定では決まらないのであれば、価格を下げて募集するなど何か手を加えれば成約に向けて動き出す可能性があることを逆の形で示しているのではないだろうか?

 今、市場を見てみると昨年からみてみると非常に安いと感じるものも多く目につくようになった。しかし、ただ単に安いというだけではなく、安さだけの点であれば他にも多くの競合物件のことも含めて一歩踏み出した戦略を立てる必要があると思う。今、求められているものは、「自分なりの安さの判断」ではなく、「客観的に見た相対的な割安感」なのだろうと思う。