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3月レポート (2011/03)


草野 裕樹

不動産市況の繁忙期シーズン真っただ中であるが、成約する物件、決まりそうで決まらない物件、全く反応がない物件と今年のシーズンは色分かれがハッキリしているように思える。この時期は、かつてはどんな物件でも成約しやすく、賃料を吹っ掛けても成約するというような神話があった。実際、古いワンルームで洗濯機置き場の無いようなものでも入居する期間は別として成約していたと思う。また、引っ越しに伴い販売する物件なども多く市場に出回るような時期もあったが今ではその陰も薄い。
昨今の不動産市場においては物余りが色濃く見え始めている。その内容は賃貸であっても売買であっても容易に見て取れるようになった。賃貸は特にその状況が顕著であり、賃料や入居条件に大きく影響を与えている。賃料の大幅ダウンやフリーレント契約、内装を過剰に凝った仕様にするなど方法は様々であり、競争は日に日に激化していると思われる。売買のほうにおいても価格が下がり基調であり、特に古い物件が多く市場に見受けられるようになった。このような状況に至った要因は何なのだろうか?
不動産価格(賃料)の崩壊は過剰供給からスタートする。不動産は消費物とは異なり、重要→供給→消費→重要・・・というようなサイクルは見受けられない特性を持つ。不動産は簡単に壊すことも、作ることも出来ないためである。作ることも、壊すことも容易にできないものを大量に供給した場合、消費がないため供給されたものが長期間市場に残存し一方的な供給物になる。そして供給が止まることなく続いた場合、市場には多くの商品が存在するとともに旧体制、旧スタイルの商品が残存し多くの競合物件の中で生き残るため価格での勝負に出ることになる。そうした場合、少々の条件差であれば価格で対抗することで充分勝機が見えてくる。しかし、古い物件などになってくると価格のみで対抗することも難しく、設備の入替え、賃料以外のサービスなどの手立てを打ってくることがある。実際この方法は不況下においては非常に有効であり、費用を抑えたいという希望と連結し需要を生む。しかしこの方法が広まることで多少の価格下落で新しい商品と対抗していたものがテリトリーを脅かされることになり、一層の価格競争、サービス競争へと突入することになる。この状況が続くと持久消耗戦になり、サービスを施せるものと施せないもので勝敗が決まってくる。
不動産業界における商品は常時サービス競争にさらされている。しかし全ての競争に価格のみで勝負することは難しい。需要に合ったサービスを提供できる物件こそが今年の繁忙期に成約する物件なのではないだろうか。