不動産管理体験記

目次

★体験談 1 : 「滞納防止のポイント」1
★体験談 2 : 「滞納防止のポイント」2
★体験談 3 : 「管理のつぶやき日記」1
★体験談 4 : 「法的手続きとは?」
★体験談 5 : 「法的手続きとは?」〜続編〜
★体験談 6 : 「管理のつぶやき日記」2


★体験談 1 : 「滞納防止のポイント」1
なかなか好転しない景気と悪質な家賃滞納は比例しており、毎月新たな滞納者が出現するため家賃回収の業務というのは非常にストレスがたまります。
滞納防止のポイントは「スピーディな督促」と「あまり滞納者の話を聞かないこと」です。いちいち相手の事情をきいてあげていたら、滞納者だらけになってしまいます。一見冷たそうな感じですが、結果的には本人のためになります。

当社ではその月の家賃が期日どおり入金にならず、5日まで入金にならなければ本人と連帯保証人へ催告書を出します。さらに7日後、催告書の期限までに入金がなければ、実際に訪問して催促をします。留守の場合は通知を入れます。

数日家賃が遅れただけで、催告書が届いたと怒って連絡してくる入居者や保証人がいます。電話連絡をくれなかったとか、保証人にまで出すなとか、機械的な対応に腹が立つといったことが多いです。入居者としては、保証人との人間関係がまずくなるので滞納を知られたくないし、保証人としてはまず本人に催促してほしいというのがほとんどです。

入居者から「今度から保証人には内緒にしてくれ」といわれても「無理です」と即答します。

連帯保証人は「まず本人に請求せよ」とか「本人の財産を差押よ」とは言えない特質がありますので、いきなり請求されても支払う義務があるのです。

ですから、怒って電話をかけてきても基本的なことをお話して、逆に「早期に滞納を知らせてもらってありがとう」と言ってもらうような雰囲気にもっていきます。
これがなかなか難しく、すべてうまくいくわけではありませんが、「今日振込んだので、催告状は出さないで」という電話がくるようになります。

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★体験談 2 : 「滞納防止のポイント」2

滞納は管理会社の責任と誤解されがちですが、管理会社は賃貸借契約の当事者ではありません。管理委託契約に基づく督促を、善良なる管理者の注意義務をもって行うことが大事です。自分の財産に払う注意よりも多くの注意をはらう義務があります。つまり迅速かつ正確に入金チェックを行い督促していくことが肝要です。

運悪く長期滞納に移行した場合は、債権者である貸主が連帯保証人へ内容証明で通知することになります。内容証明は法的手続きを前提にしているので、債務者へ催告し、請求行為をしているかどうかが重要です。配達証明書が裁判の証拠となり、「請求された覚えはない」と債務者に言わせないための通知です。

内容証明郵便はこれ自体に督促の強制力はないのですが、次にとる法的措置を債務者に知らせるには十分であり、通常の請求書や催告書と違って自発的に入金してくる場合があります。

こうなってくるともうお分かりでしょうが、貸主と借主および借主の連帯保証人といった関係から一気に債権者と債務者の立場になってきます。そしてさらに、原告と被告という最悪の関係になる可能性も出てくるのです。

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★体験談 3 : 「管理のつぶやき日記」1

○月○日
催告状発送から5日後、女性入居者(36歳)の連帯保証人である父(71歳)より電話あり。
「家賃滞納の書状をもらったが、娘と全く連絡がとれなくて困っている。申し訳ないが一度部屋を見てきてほしい。何せ福島県在住なのですぐには行けない。状況によっては鍵を開けて中を見てほしい」云々。

お父さんが娘と最後に話をしたのは2、3ヶ月前とのこと。部屋の電話はFAXに切り替わり、携帯電話は呼びだすが応答ない。フリーのライターという職業柄本人との連絡だけが頼りである。

とりあえずマンション管理会社に問い合わせる。管理人にきくと水道も灯油も使用料が発生しているので、生活している様子。メールボックスには少量の郵便物がある程度。部屋を訪ねてもらったが応答ないという。

出張か何かで長期外出しているのだろうか? 不安がよぎるけれども、こういうときは悪いことを考えないようにした方がいい。
念のため、本人の携帯電話に何度もかけてみるが出ない。
自宅電話がFAXに切り替るので、「ご実家のお父様が心配されていますので、至急ご連絡下さい」と送信する。

夜になってから、営業のIさんにも見に行ってもらう。
結果はやはり留守で、電気のメーターも動いている。変わった様子はないとのこと。
お父さんに報告すると、娘さんのこれまでのいきさつを詳しく聞かされ、札幌に別れた夫がいるとのこと。この男性に聞いたら何かわかるかも知れないので、お父さんに電話するようすすめて会社を後にする。

娘さんの別れたご主人には電話をかけにくいだろうなと思いつつも、すべてがうまくいくように祈る。

○月○日
ゆうべのお父さんから、朝一番で電話あり。
「あなたの言ったとおり、前の夫に電話をしたら、心配して娘の友人に電話をかけてくれたんです。それで、娘は急に入院することになって、この10日間病院にいることがわかりました。迷惑かけて本当にすみませんでした。いろいろ助かりました。家賃はすぐに振込みますので」とのこと。
あ〜よかった。病状もたいしたことなく、すぐに退院するそうで本当によかった。心配でドキドキしたけれど、悪いことを考えないようにしたのが良い結果につながったのかも知れない。お父さんも安心したらしく、明るい声で電話を切った。

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★体験談 4 : 「法的手続きとは?」

債務者へ内容証明郵便で催告しても入金にならない場合は、「支払督促」のご提案をする場合があります。債務者の居住地を管轄する簡易裁判所書記官へ申立をして、支払命令を出してもらう手続きです。

申立書の様式には決まりがあり、保証人に対して支払命令を発してもらうには「保証債務請求事件」として申立をします。書類が整えば郵送でも可能であり裁判所へ出廷する必要もありません。費用は印紙代、切手代などで請求額の2%程度です。

ごく最近も入居者が夜逃げ同然で行方不明となり、滞納家賃が2ヶ月を超える物件がありました。保証人である父親はB町に居住しており、札幌まで部屋を片付けに来るでもなく家賃も支払ってくれませんでした。電話は昼夜を問わず通じない状態で、再三の通知や勤務先への連絡にも無視をきめこむばかりで、地方にいることも手伝って催促にも万策つきようとしていました。

オーナーはマンション投資をしているのだから多少のリスクは覚悟の上、と割り切ったお考えの方ですが、「保証人が父親であるのに、息子の不始末を親がしないということが信じられないし、全くけしからん」と言い、支払督促のことを提案すると「費用も少額であるし、やってみたいです。何もしないよりましですし、少しは回収の可能性も期待できるかもしれない」「家賃を回収するのがこんなに大変とは思わなかった。Eさんには本当にご苦労様です」と言ってくれました。

B町の管轄簡易裁判所を調べ、書類を準備し、オーナーと何度もやりとりをして何とか申立書を発送することができました。相手方に送達後2週間以内に異議申立があると通常の訴訟へ移行しますが、2週間経過しても何の音沙汰もありません。
裁判所に確認すると、異議は出ておらず、仮執行宣言付支払督促申立をすることになりました。

仮執行宣言付支払督促正本が債務者に送達後、さらに2週間以内に異議申立がなければその支払督促は確定し、確定した判決と同じ効力をもつため、債権者は強制執行することができます。

今回オーナーは最終的に債務名義を得たわけですが、複雑な思いを抱えているようでした。支払督促が届いても相手方が支払に応じてくれなかったことにただ驚いていました。
「ここまでして頂いて払わないのですから諦めざるを得ないでしょう。自分も人の親として信じられない思いです。今回は本当にいい勉強になりました。いろいろありがとうございました」という丁寧なメールを最後に頂きました。

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★体験談 5 : 「法的手続きとは?」〜続編〜

前回支払督促を申立てたオーナーの話を書きましたが、これには後日談があります。

債務者の勤務先を何とか特定し、謄本を取り寄せることができましたので、オーナーは給料を差押える手続きをしたのです。舞台は簡易裁判所から地方裁判所支部へと移りました。

債務者はその会社に正社員として勤務していたわけではないので、差押が功を奏するかどうかは全く見当がつきませんでした。
申立後何の音沙汰もなく数週間経過したある日、オーナーは債務者の身内の方から連絡を受けました。それは現金書留で全額送金するという内容でした。事情はよくわかりませんが、とにかく全額回収できれば申立を取下げるだけです。

これまで何をしてもノーリアクションだったのに、連絡があったとは驚きました。
さすがに債権差押は強烈です。
そして予告どおり、二週間後に未回収分全額が遂にオーナーのもとに届いたのです。
ほとんど諦めていただけに回収になった嬉しさよりも「びっくしりしました」とメールで感想を送ってくれました。

どのような経緯で現金書留が、オーナーのもとに送られてきたのか窺い知ることはできませんが、債権差押の波及効果であったことだけは確かです。

「今回のケースは親が連帯保証しながら、息子が2ヶ月もしないうちに勝手に退去し未払いとなったのだから、親には責任を取らせる必要がある。息子にも世の中の厳しさを知ってもらう上でも良かった。いろいろ手続きが面倒な気がして、なかなか踏み切るのは難しかった」とオーナーは今回のことを振り返っています。

そして「適切なご提案や、Eさんの強い意志に従って進めることができて本当に助かりました」とも仰って下さいました。

オーナーご自身がクールでスマートなお考えの方なので、良い結果になったのだと私は思っています。

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★体験談 6 : 「管理のつぶやき日記」2

9月28日 

通帳を盗まれたので取引口座を新設した入居者がいた。この名義人が家賃自動振替口座の変更をした場合、提携している集金代行業者へデータを送っても請求停止サインが出たままになっており、回避する方法はあるが、今回の請求には間に合わなかった。

引落しにならない理由を何度も電話で説明したがわかってもらえず、「こちらの不備ですから今回は集金に伺います」ということで現地へ。

入居者は72歳の男性で、強烈な被害妄想ワールドの中に生きているようだ。内縁関係の同年代の女性が同居しているが、こちらもまたトンチンカンでお話にならない。

お客様が高齢ということで、ボランティア精神を発揮して行った自分が甘かった。後悔しても遅いのだが。

玄関先で内縁の妻より集金には成功したが、入居者本人が「話があるから入れ」と言いだした。断ると、老人は大声でわめきながら近寄ってくる。眼が完璧にすわっている。押し問答の末、あっという間に私の手からお金を取り上げ、領収証も返してくれない。おまけに鍵をかけられ「話を聞くまで帰さない」と監禁状態になってしまった。やれやれ。

正当なことを話しても全くラチがあかないし、こちらも怒りがこみ上げてきてついに爆発してしまった。女だと思って甘く見ていたのか、私が大声で怒鳴ると眼の色が変わりちょっとひるんだ。

相手のスキをついてお金を取り返した。鍵を開けて出ようとしたところ、髪の毛を引っつかまれ、もみ合っているうちに床に倒されてしまった。ヒジで受け身をしたが後頭部を打った。老人も一緒に転んでいた。

ボロボロになって脱出しやっと会社に戻った。老人から怒りの電話が数回きていたとのこと。それにしても集金も命がけだ。日頃から身体を鍛え、護身術も体得しておかなければやっていけない。

できれば『チャーリーズエンジェル』のように強くなりたい。

幸い打った頭はたいしたことはなかったが、自慢の黒髪が大分抜けてしまったのがショックだ。

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