マンション投資の鉄人

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第四の鉄人

実録体験談-私のマンション投資歴(3)part2

千葉県 Y.O.(外資系大手投資顧問会社・投資運用部長)

景気局面別、マンション・オフィス投資法

 これまでの好・不況の景気循環は右肩上がりの成長基調の中で演じられてきました。
物件をA点で「高値掴み」して買ってしまった場合も、我慢して2年も待ち続ければ次の上昇局面に入り、やがてまたBという、Aよりも高い「山」が訪れたのです。ところがデフレ基調の中でこれからの景気循環では、DがCよりも低くなる公算もしています。「我慢」が金銭的に報われる時代から、単に傷口を広げてしまう場合もある時代に移行してしまったのです。
 今後は、投資した物件から家賃収入以上の値上がり益も得たいという投資家には、E点近辺で買いを入れる状勢判断力が欠かせなくなります。私は現在(1996年 年頭)の不動産市況はF点に位置していると考えています。不動産市況の回復を期待して、利回りがゼロまたは極めて低水準の不動産をじっと抱えてきた投資家の体力が消耗して、止むに止まれぬ「投げ売り」や倒産による競売が急増して、不動産価格の下げ過程も最終局面入りしつつあると見ているのです。後になってみれば、今年後半から来年にかけてがE点を経過した時期であったということになるのではないでしょうか。
 税制や競売システムなどが不動産流動化に向けて現実に則して改革されないときには、数十兆円の不良債権の担保物件も含めた「塩漬け不動産」の市場への放出スピードは大きく加速せず、今後数年に渡って潜在的売り圧力として不動産市況の頭をおさえることもあり得ます。現局面がまだG点である可能性もあるわけです。しかし某大手不動産会社より伝え聞くところによると、この不良債権の背後にある担保不動産のオーバーハング(潜在的売り圧力)を過大視すべきではないようです。債権買取機構に持ち込まれた担保物件のほとんど全てが、立地面などに大きな問題を抱えており、市場全体の需給うぃ悪化させるだけの利用価値をもっていないというのです。
 いずれにしても現時点がH点でないことは確かです。G点で購入すべき物件の特徴は、H点で購入すべき物件とは異なります。前回述べた、「好況時は高級物件が、不況下では低家賃タイプの物件が人気化する」という法則を思い出して下さい。好況や不況の期間が長引くほど、市況はこの法則に則った動きを強めてきます。すると現時点ではまだ、景気に鈍感な、低価格・低家賃で高年式・高利回り型の地方大都市中心部に立地するマンションが投資対象として値下がり余地も小さく最も安全ということになります。
 一方、不動産市況が底入れし当分回復歩調で推移すると判断した局面で、比較的短期間での値上がり益を狙いたい投資家は、自分の不動産ポートフォリオを次のような物件中心にシフトさせる必要があります。それは重要が景気に敏感な首都圏都区部の人気高級マンションやオフィス・商業用物件、また場合によっては徹底的に売り込まれた郊外立地の高級物件やリゾートマンションなどです。市況回復局面ではこうした物件の値上がり率が地方の低価格マンションを大幅に上回る可能性は依然大きいといえます。自分の不動産ポートフォリオを市況局面に対応させて、より大きな儲けを目指す投資家は、この「価格の上下のブレの小さい地方の低価格マンション・アパート、ブレの大きい首都圏高級・商業用物件」という特性を充分考慮にいれた資産運用を心がけるべきでしょう。

物件売却のタイミング

 比較的短期的な投資では市況が加熱気味になり、金融引締め政策が検討されるなど、景気循環上の「山」であるC点やD点に接近しつつあると判断したときが「売り時」です。長期投資では、現在所有している物件よりも明らかに魅力的な物件を見つけた時に「乗り換え」のために売却するときが、そのタイミングといえます。長期投資スタンスとは、資金を現金のまま遊ばせないことを指しているとも換言できます。

ローンの威力を再認識する

 同じ500万円の元手で物件を購入する場合でも、現金で500万円の物件を1戸買付けるよりも、ローンを活用して500万円の物件を3戸買付けた方が、1時的空室等のリスクの分散が計れます。
また、来世紀まで不動産不況が続かない限りは、投資効率を高めるのにもローンは絶大な威力を発揮します。ここで、いくつかのモデルケースの投資収益率を比較してみましょう。

〔ケース1〕
・100万円を5年間、銀行預金で年2.5%の複利運用
 ⇒ 5年分の利息13万円は、元金100万円に対して13%の収益。

〔ケース2〕
・500万円の中古マンションを全額自己資金で購入、5年後に同額 500万円で売却
・手取り家賃収入は年間40万円(年利回り8%、5年間変動なし)
・家賃収入には5年間、金利が付かないと仮定
 ⇒ 5年間で200万円の家賃収入は、元金500万円に対して、    40%の収益。仮にマンション売却価格が500万円ではなく   350万円又は700万円であった場合の収益は各々10%、80%
   となる。

〔ケース3〕
・中古マンション売買価格と家賃の条件はケース2と同じ
・ただし、自己資金は100万円で、400万円は年利6%固定の元利 均等払い5年間ローンを利用
 ⇒ 5年間の手取り家賃収入200万円から返済利息74万円を差し   引いた126万円は、本での100万円に対して126%の収益。
   仮にマンションの売却価格が500万円ではなく、700万円で   あった場合の収益は326%。

〔ケース4〕
・ケース3と同じ500万円の中古マンションを同じ条件のローンを 利用して購入
・ただし、5年後のマンション売却価格は3割値下がりして350万 円、5年間の手取り家賃収入は2割低下して年32万円。
 ⇒ 5年間の手取り家賃収入160万円から売却損150万円と返却   利息74万円を差し引いたマイナス64万円は、元手の100万   円に対して64%の損失。


古いマンションは本当に大丈夫なのか

 「マンションは管理を買え」と言われるくらい、日頃のメンテナンスがマンションの耐用年数うぃ大きく左右するようです。手入れが良ければ、築後30年でも立派に使用される例も徐々に出始めています。だだし、賃貸向中心のマンションでは、そこに済み続けるオーナー移住者が少ないため、とくに入念な管理状況のチェックが求められます。定期的に大規模な修繕が実施されているか、長期修繕計画はあるのか、充分な修繕積立金や管理費が徴収されているか、管理組合は活発に運用されていて駐車場等積立金以外の収益源をもっているか(借入金はないか)、保守・清掃の状態は良好か、管理人は常駐か日中勤務か、などをよくチェックしたいものです。
 ちなみに、プロの中古マンション価格査定マニュアルを覗いてみると、築後1年のマンションと比較したときの減価率は、築後10年で13.5%、築後15年で21%、築後20年で31%、以後1年経過するごとに2.5%加算、となっています。築後20年を経過したマンションでは、5年毎に価値が12.5%低下していく計算ですが、管理や新築マンションと比べた立地が優れていれば、減価幅はこれよりも相当小幅にとどまると考えています。しかし、1年経過するごとに築後15年以内のマンションは価値が1.5%低下するのに対して、築後20年以上ではこれが2.5%になるとされているので、これを補うため20年以上のマンションにはそれより新しい物件と比べて少なくとも1~2%は高い投資利回りを望みたいところです。