マンション投資の鉄人

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第九の鉄人

歴史は繰り返す。:ガルブレイス著 「バブルの物語」の思い出。 part2

神奈川県厚木市在住 S.M.(不動産コンサルタント)

もう一点、英国と日本という全く逆の経済状況を同時に眺めていると、あらためて価格形成は本当に心理状況に支配されていることがよくわかります。英国では既に前述のように価格が上昇しているにもかかわらず中古物件は広告に出るとだいたい1週間以内に売れているようです。先高感が購入を急がせていることは明らかです。それに比べ日本の状況はご存知のとうりです。値下がり期待から買い控えが起こり中古物件はまだ下がり続けています。個人の正しい行動が全体を悪化させるという「合成の誤謬」のような状態が発生しております。こうやって見てみると価格上昇時にしても下落時にしても政策的に不動産価格をアンダーコントロールに置くことはほとんど不可能ということがよくわかります。つまり、不動産は需給バランスが崩れ易く、景気拡大期においても縮小期においても価格がオーバーシュートし易いということです。

英国の不動産価格上昇分析で私は、私の別の予測が実証されていることも発見しました、今回各物件について見てみると大きくてスタンダードの良い物の方が値上がり率が高いのです。これはおそらく購買層である高収入の富裕層には価格上限がないためと考えられます。それに対しスタンダードの低いものはそれほど値上がりしておりません、おそらく貧困層の購買力が価格の上限を決めているためと考えられます。もし、今後日本の社会が同様に変化するとスタンダードの高いものは価格上昇が期待できるにしてもスタンダードの低いものは期待できないということが予想されます。前回のバブルの時のようになんでもかんでも値上りするようなことは起きないと考えた方が良いのではないでしょうか。この件は実のところ住居環境という意味で投資物件よりも自宅について考えなければいけないことなのかもしれません。能力主義の名の元に本当に階層社会が到来しそうです、英国で外出の度に家のバーグラーアラーム(防盗警報機)をセットしていたことを思い出しました。余談ですがこれが誤作動が多く、本当に近所迷惑でした、日本製だときっと良い物ができるでしょう。いやもっとエスカレートして米国のように要塞都市のようなニュータウンが誕生してくるかもしれません。

私はこれまでロングタームでのインフレ懸念についてお話してきました。しかし、今回の英国の例をみると近い将来景気回復が明らかになると条件の良いものから心理的な要因で価格上昇が起こる可能性が有りそうな気がしています。夜明け前が一番暗いといいますから現在は夜明け前なのかもしれません。明るい未来のために夜が明ける前に戦いの準備はすべて終了したいものです。