マンション投資の鉄人

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第二十二の鉄人

不動産投資、もうひとつの指標「ROI」~「借金も財産の内」って本当なの?

東北地方在住 瀬谷 潤

不動産投資を実践する際の指標として、「利回り」というものが重要であることは、前回お話させていただきましたが、もうひとつ「ROI」という指標があることをご存知でしょうか。

 少ない資金で大きな物件を動かすことができる、「レバレッジ効果」(梃子の原理)をフルに活用することを戦略とした、不動産投資を実践する場合、自己資金が少なければ少ない程、返済期間が長ければ長い程、ROIの数値は上がります(レバレッジ効果は高まります)から、少ない資金を最大限に活用しようという、不動産投資におけるレバレッジ効果を最大限に狙う投資家にとって、ROIほど心強い指標はない訳です。

 「ROI」とは「Return On Ⅰnvestment」の略で、日本語に訳せば「投資回収率」。
つまり、投じた自己資金が、年間何%回収できるかを示したものです。(って、まんまの説明じゃねえかっての)
数式で表せば、年間回収金額÷投資金額×100=ROI となります。

 例えば、利回り10%の1,000万のマンションを、自己資金100%で購入したとしましょう。(諸費用等は一切考慮しないこととします)
この場合の投資回収率。つまりROIは、利回りと同じ10%。つまり、自己が投じた資金を回収するには10年かかりますから、投資資金回収率(ROI)も10%ということになります。
 それでは、このマンションを100万の自己資金と、900万の借り入れで購入したとしたらどうなるでしょうか?
確かに「利回り」で考えれば、現金で買おうが、借金をして買おうが、同じ10%の利回りです。
 仮に、年利3パーセント、15年返済で考えた場合、年間の総返済額(元金と金利を合わせた額)は75万円程度。家賃年収100万円から差し引いても、年間のキャッシュフローは25万円のプラスということになります。(この場合も、諸費用のことは考慮していません)
 つまり、ROIで考えれば、100万円を投じた金額(投資資金)に対し、年間25万円。率にして25%の自己資金を回収することができるという訳です。
例えば、返済期間を10年延長し、25年返済で考えた場合、年間の総返済額は52万円程度に抑えられますので、家賃収入100万円から差し引いても、年間のキャッシュフローは実に48万円のプラスということになります。
ROIで考えれば、100万円を投じた金額に対し、年間48万円。率にして48%もの自己資金を回収することができるという計算になり、実に2年ちょっとで投資した資金を回収してしまうという、とっても美味しい「机上の計算」が成り立つ訳です。
まさに、「現代の錬金術」(?)と言っても良いのかもしれませんが・・・・・。

 以前ぼくは、お金持ちになるためには三つの方法しかなく、その中で、不動産投資が最も適している旨のお話をさせていただいたことがありますが、不動産投資でお金持ちになった人。あるいはなろうとしている人たちは、借金によるレバレッジ効果。つまりこのROIという数式のカラクリを知り尽くし、巧みに利用しています。

 しかし物事にはすべて裏があります。
 日差しが強ければ強いほど、影も又濃くなる例えと同じです。
 ROIを計算する際、不動産投資に隠れているリスクも織り込んでおかなければなりませんし、何より金利上昇リスクを常に考えておかなければなりません。
 なぜなら、投資向け住宅ローン(アパートローン)は、その多くが変動金利であり、一般の住宅ローンのように、固定型に切り替えることができないタイプがほとんどだからです。

 ROIがいくら凄い数値を叩きだしたところで、所詮「借金の上に成り立っている机上の数値」に過ぎません。
 空室や家賃の遅滞で、家賃収入が途絶えようが、たとえ自身が病気になろうが、いかなる事態が起こったとしても、借金の返済は待ってはくれません。
 借金がどれほど怖いものであるのか。
 日々、どれだけ心に重くのしかかってくるものであるのか。
 こればかりは経験したことのある人にしかわからないと思います。
 ROIを計算するための元となる数値。つまり、物件価格、借入金額、返済期間等の数値が上がれば上がるほど、レバレッジ効果も上がる分リスクも又上がるということです。

 「借金も財産の内」という言葉を皆さんも一度は耳にしたことがあると思います。
しかし、ぼくは、口が裂けてもこの言葉は言えません。というか、ぼくには、この言葉を口にする資格はないと思います。
 この言葉を口にすることができる人とは、ROIの持つ、そのカラクリを最大限に引き出すことができる人。レバレッジ効果の持つ変動性を許容できる人。すべてのリスクをオペレーションすることができる、知識と精神力。何より資力のある人に限られるのではないか?というのが、かつて多額の借金をして、分不相応な不動産投資を実践し、その挙句「ローン事故」を起こしてしまった経験のあるぼくの、偽らざる気持ちなのですが、皆さんはどのようにお考えになるのでしょうか・・・・・・・。



著書紹介
『住宅ローン地獄からの生還』    マイブックル
『住宅ローン破綻 競売があなたを救う~実践者が語る最後の解決策』    早稲田出版

オフィシャルブログ:『瀬谷流プチ不動産投資日記』