マンション投資の鉄人

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第28の鉄人

「デフレ、インフレ、国の借金問題 そして、不動産投資」

(一級建築士)神奈川県在住 結喜たろう

不動産投資は社会貢献への道です。
堂々と胸を張ってください。不動産投資で得たお金を消費に回すことはとても社会の役に立つのです。ここでいう社会貢献とは景気回復に役立つということです。景気が回復すれば政府の税収も増えます。税収が増えれば、消費増税などしなくても、社会福祉や公共インフラの整備にお金を回すことが出来ます。さらに国民の消費も増えることから、札幌のような地方都市にも消費拡大が起きて来ます。

当たり前ですが、不動産投資と景気は直結しています。適度なインフレによる好景気であれば、不動産を高く売ったり貸したりできます。逆にデフレ不況に向かえば、不動産は安くしか売れないし貸せません。インフレの方が収益性は高くなります。
投資家に限らず、一般庶民であっても、適度なインフレによる好景気は望ましいでしょう。適度なインフレとは年間物価が2%ずつ上がっていく状況を言います。
そういうと「なんだ?毎年、物価が値上がりしていくのか、インフレなんてとんでもない!」と怒る方もいるかも知れませんが、上がるのは物価だけではありません。皆さんの所得も上がります。
例えば、今日1000円で買えたモノが明日には1010円になっていたとします。その一方で、今日1000円もらえた時給が明日には1100円もらえるのです。差引90円の所得が増えたことになります。モノが高く売れれば、それだけ企業が儲かるわけですから、儲けが給料に反映されます。給料が上がればモノを買う余裕が生まれることで消費が増えます。消費が増えれば、企業の収益が上がり、更に給料も上がっていくという好循環になります。昭和時代に何度かあった好景気の時期はまさにこういう状況でした。

逆にデフレとはなんでしょうか。デフレ下では毎年、物価が安くなっていきます。
「なんだ?物が安く買えるならいいじゃないの、何が問題なんだ?」と言いたくなるのですが、物価が下がる以上に皆さんの所得が下がるという厄介なことがあります。今日1000円で買えたモノが明日は990円で買えるようになります。その一方で、今日1000円もらえた時給が明日は900円しかもらえなくなるのです。差引90円の所得が減ったことになります。モノを安い値段でしか売れないと、企業は儲かりません。儲からないと給料も減ります。給料が減るとモノを買う余裕がなくなります。すると、更に安くしないとモノが売れなくなり、給料も減っていくという悪循環です。これをデフレ・スパイラルといいます。
今の日本はまさにこの泥沼から延々と抜け出せずにいます。
 ところでこのデフレはいつから始まったのでしょうか。
よく言われるのが昭和バブルの崩壊からです。1989年末バブルの崩壊、そこから日本経済はひたすら落ち込んでいったと言われています。ところが実際のところ、バブル崩壊後も日本の景気は伸び続けていました。

名目GDPとは、簡単にいうと、国民が稼いだお金、要するにみなさんの財布の中身の合計です。このグラフは国民の財布の中身の増え具合を示しています。
グラフを見ると、バブル崩壊後GDPの伸びは鈍くなっていますが、GDPは増え続けていることが分かります。それがある時期からピタッと伸びなくなっています。
実は、今のデフレは1997年、橋本政権から始まりました。橋本政権は、消費税3%→5%への増税、特別減税の廃止、医療保険の本人負担増といった緊縮財政を行いました。
緊縮財政とは、政府が、増税などで国民から税を搾り取る反面、国民に対してはケチに徹するというものです。そんなことをすれば、当然、国民の財布のヒモは固くなり、モノを買わなくなります。モノが売れ無くなれば物価が安くなりますが、企業の収益は減り、給料が減っていきます。この時から日本のデフレは始まったのです。
 デフレ不況は、茹でカエルのように、ジワジワと国民を貧しくしていきます。しかも、諸外国との相対的な国力の低下を招き、それは私たちの安全保障自体を脅かすことになります。安全保障というと軍事面ばかりが強調されますが、食糧、エネルギー、医療など身近なところ全てに当てはまります。外国に依存しなければ、食べ物や電気、医療サービスが手に入らないとなると、供給先である外国政府の言いなりになります。もはや日本国民に主権があるとは言えないでしょう。単なる植民地です。
このように、私たちの生活の根幹を脅かすのが長引くデフレ不況です。歴史上、デフレにより先進国から途上国に転落した国は幾つもあります。
それにしても橋本政権は、何故、こんなことしたのでしょうか。
話は変わりますが「日本国の借金問題」というのを聞いたことがあるかと思います。
「日本は1000兆円、1人当たり800万円以上もの借金がある、このままいくと日本は破綻する!」というものです。私も昔はこの話を聞いて驚愕し、一生懸命調べました。
結論から言うと、この「国の借金問題」は真っ赤な嘘でした。
借金というのは日本政府が発行する国債のことです。
そもそも借金というからには貸している人が必ずいるはずです。この1000兆円というのは一体誰が貸しているのでしょうか。それは日本国民です。簿記をやってる方なら直ぐに分かると思いますが、誰かの債務はそのまま誰かの債権です。日本国政府1000兆円の負債は、そのまま日本国民1000兆円の資産になります。従って「日本国の借金」ではなく「政府の債務」というのが正しい理解です。
しかも日本国債は日本円で取引されています。日本円を発行しているのは日本政府の子会社である日銀です。その気になれば日本政府は日本円を発行して国債を買い取ることで借金を返済することができます。因みに「そんなことをしたらハイパーインフレが起きるぞ!」という人がいるのですが、起きません!…というか起きませんでした。ハイパーインフレの定義は月率50%(年率13000%)を超える物価上昇です。
2013年より日銀は、日本円を発行しての国債買い取りを、かつてない規模で実施してきました。いわゆる「異次元の金融緩和」というものです。2017年9月現在では、日銀が買い取った国債保有量は500兆円ともいわれています。これは先ほど書いた「日銀が円を発行して借金返せばいい」というのと同じことです。2012年頃に「日本国は借金で破綻する!」と言っていた(いまだに言われている)1000兆円の借金とやらは、実はもう既に半分の500兆円にまで減っているのです。
不思議なことに、このことは世間では殆ど報道されていません。しかも、肝心のインフレ率はどうなったでしょうか。ハイパーインフレなどと騒いでいましたが、なんと現在のインフレ率はマイナス成長です。むしろデフレは悪化してます。自国通貨建て国債を発行してる日本国が、破綻するなんてことは100%あり得ないのです。
 
 さて、なぜ「国の借金問題」について説明したかというと、この「嘘」が、日本を深刻なデフレ不況へと向かわせ、更に脱デフレの障害となっているからです。
「我が国は大きな借金を抱え、このままでは破綻する。それを防ぐには、収入を増やし、支出を減らさなければならない、だから、増税を行い社会福祉や公共インフラ整備への予算カットを行うのは仕方のない事だ」、こういうロジックが20年もの間、延々と続いてきました。
「国の借金問題」が初めて登場したのが1995年、当時の大蔵大臣、武村正義が国会で「我が国は深刻な借金を抱えている」との財政危機宣言を行ってからです。それ故、翌年に発足した橋本政権は緊縮財政を始めました。日本が深刻なデフレ不況に突入したのは前述した通りです。
2010年、民主党の菅直人政権では、2020年までのプライマリーバランス(PB)黒字化目標が導入されました。これは「税の収入>税の支出」となるように政府の収支を黒字化しようというものです。一見すると良さそうに見えます。しかし、これは「政府がお金を使う場合は、別の予算を削減しなければならない、どうしても必要なら増税する」という代物です。典型的なのが2011年の東日本大震災です。復興増税なるものが被災者からも課せられるようになりました。本来であれば、国債を発行し、それを復興予算に充てることで、経済効果も上がり復興も進むのですが、それは出来ません。PB黒字化目標があったからです。言うまでもないことですが、この目標は「国の借金問題」から発生しています。

では、「脱デフレ」を掲げて始まった現在の安倍政権はどうでしょうか。政権は既に5年目に入っていますが、正直、脱デフレが成功してるとは言えません。目標に掲げていたインフレ率2%も既に諦めモードです。理由はハッキリしています。2014年にやらかした消費増税と、公共事業を削減した緊縮財政です。
もともとアベノミクスは、1.金融政策で大量のお金を供給し、2.財政政策で積極的に予算を組んで公共事業を行う、という政策のはずでした。当初はその通りに行ったことで、2013年はかなり景気回復の兆しが表れたのですが、途中からデフレ促進政策に転換したのです。増税して政府事業を減らせば景気回復なんてするはずありません。そこには金融政策(異次元の金融緩和)さえやっていればデフレは解消される(リフレ派理論)という安倍政権の勘違いがあったように思います。

結局のところデフレとは、「総供給に対する総需要の不足」が原因です。
いくら日銀がお金を発行して増やしても、それが使われなければ意味がありません。需要がなければ、政府が積極的に財政出動をし、民間に発注をかけることで需要を生みださなければならないのです。現在の政権もそのことは分かっているようで、度々、財政出動の話は上がっては来るようです。しかし、それを行うためには、「国の借金問題」という嘘に端を発した、PB黒字化目標が邪魔になります。この目標を早急に撤廃しない限り、日本の脱デフレは難しいと思います。

 さて、このような状況下で、我々投資家はどうすべきでしょうか?
投資の中でも不動産投資はもっともGDPに貢献します。物件売買、賃貸に出すための室内改造、改装、家具の購入設置などなど、多くの職種にお金を落とします。このことは胸を張っていいと思います。私自身も、投資によって発生する様々な付加価値が、今のデフレ脱却に貢献してることに胸を張り、どんどん投資していきたいと思っています。

結喜たろう
都市計画・建築設計などのデザイン系事務所、不動産事業などを経て、株式会社山幸投資事業部を設立。現在、空間建築などのデザイン業務のかたわら、不動産をはじめ様々な投資事業を行っている。著書に『FXで究極の海外投資』(パンローリング)がある。「週刊SPA!」、「ダイヤモンドZAI」、「DIME」などの雑誌にも登場している。東京都立大学大学院工学研究科修了。一級建築士。